島袋春美
助産師
沖縄県南城市を拠点に、母乳育児支援と産後ケアを専門とする助産師です。病院・市町村保健師での勤務経験を経て、母乳育児相談室『春』を開設しました。お母さんと赤ちゃんが心地よく過ごせるよう、母乳トラブルのケアや授乳姿勢のアドバイス、断乳・卒乳のサポートを行っています。
執筆者:母乳育児相談室 春 編集部
この記事でわかること
- 1
操体法は気持ちいい方向へ体を動かすセルフケア
- 2
産後の骨盤まわりの不調には無理のないケアが大切
- 3
痛みやしびれがある場合は医療機関や専門家へ相談する
「産後から腰が痛い」「骨盤の歪みが気になる」そんなお悩みを抱えていませんか?
育児に追われる毎日、整骨院に通う時間を確保するのは難しいものです。この記事では、自宅で寝たままできる「操体法」を使った骨盤ケアを紹介します。
- 操体法の基本原理と骨盤ケアに適している理由
- 寝たままできる4つの操体法の手順
- 産後ママが知っておきたい注意点
痛みを我慢せず、ご自身のペースで始めてみてください。
産後ママが抱えやすい骨盤周りの悩みには、以下のようなものがあります。
- 腰痛:抱っこや授乳で腰に負担がかかり、慢性的な痛みを感じる
- 尿もれ:くしゃみや咳をしたときに尿が漏れてしまう
- ぽっこりお腹:体重は戻ったのにお腹だけ出ている
- 股関節の違和感:歩くときに引っかかるような感覚がある
「整骨院に行きたいけれど、赤ちゃんを預けられない」「育児で時間がない」という方に取り入れやすいのが、自宅でできるセルフケア「操体法」です。寝たまま短時間で実践でき、体への負担が少ない方法です。
操体法は、仙台の医師・橋本敬三氏が創始した健康法で、「気持ちいい方向に体を動かす」という独自のアプローチが特徴です。
一般的なストレッチや骨盤矯正は、硬い部分を無理に伸ばしたり、外部から力を加えて矯正したりする方法が多くみられます。
一方、操体法では体が「楽だ」「心地よい」と感じる方向に自ら動かすことで、体の歪みを整えていきます。産後の体に向いている理由は次の通りです。
- 無理のない動き:痛みを我慢せず、体への負担が少ない
- 寝たままできる:布団やマットの上で実施可能
- 短時間で実施可能:1回3〜5分程度で取り組める
- 自分のペースで調整できる:体調に合わせて強度を変えられる
「快」に従う動きが歪みを整えるメカニズム
操体法の基本は、痛い方向ではなく、気持ちいい方向に体を動かすことです。体がこわばっているときは筋肉の緊張が続き、歪みが固定されやすくなります。楽な方向へ動かして数秒キープし、最後に「ストン」と脱力することで、緊張がゆるみやすくなります。
「がんばって伸ばす」のではなく、「楽な方向を探す」ことが操体法の大切なポイントです。自分の体の声を聴きながら行えるため、産後のセルフケアにも取り入れやすい方法です。
産後の骨盤が歪みやすい3つの原因
産後は、次の要因が重なり、骨盤周りが不安定になりやすい時期です。
- 妊娠中のホルモンによる靭帯のゆるみ:リラキシンの影響で骨盤周りの靭帯がゆるみ、産後もしばらく不安定さが残ります。
- 出産時の骨盤への負担:赤ちゃんが骨盤を通過する際、仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節に負担がかかることがあります。
- 授乳姿勢や抱っこの偏り:同じ方向での授乳や片側抱っこが続くと、骨盤周りに偏った負担がかかります。
操体法は、このような産後の体に対して、無理なく緊張をゆるめるセルフケアとして役立ちます。
産後ママには、寝たままできる操体法がおすすめです。
体力の消耗が少なく、赤ちゃんの隣で行え、授乳後すぐにでも実践できるためです。
ここでは、以下の4つの操体法をご紹介します。
| 操体法 | 主な効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| ①膝倒し操体法 | 骨盤の左右バランス調整 | 初心者向け |
| ②踵押し操体法 | 腰痛・骨盤ケア | 初心者向け |
| ③お尻ふりふり操体法 | 骨盤周りの緊張緩和 | 初心者向け |
| ④ネコの操体法 | 背骨・骨盤の全体調整 | やや慣れが必要 |
1回3〜5分程度、朝晩の実施で効果が期待できます。
まずは取り組みやすいものから始めてみてください。
①膝倒し操体法|骨盤の左右バランスを整える基本
膝倒し操体法は、骨盤の左右バランスを整える基本的な方法です。
仰向けの状態で行えるため、初めて操体法に取り組む方にも適しています。

【準備】
仰向けになり、両膝を立てます。膝頭は軽くくっつけた状態にしておきます。
【手順1】倒しやすい方向を確認する
膝を揃えたまま、左右にゆっくり倒してみてください。どちらに倒しやすいか、どちらに倒しにくいかを確認します。倒しにくい側は、骨盤周りの緊張や偏りが出ているサインかもしれません。
【手順2】倒しやすい方向に膝を倒す
倒しやすかった方向に膝を倒し、張力を感じるところまで進めます。その姿勢で3〜5秒間キープします。腹式呼吸を意識し、息を吐くタイミングで軽く腹筋に力を入れると効果が高まります。
【手順3】一気に脱力して戻す
3〜5秒キープした後、ストンと一気に脱力し、ゆっくりと元の位置に戻します。この脱力の瞬間に、骨盤の歪みが調整されます。
【回数】
3〜5回を1セットとして、朝晩に実施することをおすすめします。
【ポイント】
呼吸を止めないことが大切です。「気持ちいい」という感覚を優先し、痛みがある場合は無理をしないでください。
②踵押し操体法|腰痛と骨盤を同時にケア
踵押し操体法は、腰と骨盤を同時にケアできる方法です。
仰向けの状態で踵を前に押し出すだけのシンプルな動作のため、取り組みやすい操体法といえます。

【準備】
仰向けになり、両足を伸ばします。足は腰幅程度に開いておきます。
【手順1】踵を押し出す
片足ずつ、アキレス腱を伸ばすように踵を前方に押し出します。つま先は天井に向けた状態を維持してください。
【手順2】気持ちよく伸びる位置でキープ
骨盤から腰にかけて気持ちよく伸びる感覚がある位置で、3〜5秒間キープします。
無理に伸ばしすぎず、心地よさを感じる範囲で行います。
【手順3】脱力して戻す
キープした後、脱力して足を戻します。反対側も同様に行います。
【回数】
左右各3〜5回を目安に実施します。
【ポイント】
腹式呼吸を意識すると効果が高まります。息を吐きながら踵を押し出し、吸いながら戻す動作を繰り返してみてください。
③お尻ふりふり操体法|骨盤周りの緊張をほぐす
お尻ふりふり操体法は、骨盤周りの緊張をほぐすのに適した方法です。
四つん這いの姿勢で行うため、赤ちゃんの顔を見ながら実践することもできます。

【準備】
両膝を床につき、前腕をマットに預けて上半身の力を抜きます。
手首や膝が痛い場合は、タオルを敷いて調整してください。
【手順1】おでこをタオルに乗せてリラックス
ロール状に丸めたバスタオルや枕におでこを乗せ、首と肩の力を抜きます。
リラックスした状態を作ることが大切です。
【手順2】お尻を左右にゆっくり動かす
お尻を左右にゆっくり動かします。動く範囲は小さくても構いません。体全体で動いても問題ないため、心地よいと感じる動き方で行ってください。
【回数】
1日30回を目安に、気持ちいい範囲で実施します。
【ポイント】
無理に大きく動かす必要はありません。心地よさを優先し、リラックスしながら行うことが大切です。
④ネコの操体法|背骨から骨盤まで全体を調整
ネコの操体法は、背骨から骨盤まで全体を調整できる方法です。
背中を丸めたり反らしたりする動作を通じて、体全体のバランスを整えます。

【準備】
手と膝で体を支え、膝の間は腰幅を目安に少しゆとりを持たせます。
手首や膝が痛い場合は、タオルを敷いて調整してください。
【手順1】動かしやすい方向を確認する
背中を丸める動作と反らす動作を数回繰り返します。
どちらの方向が動かしやすいか、確認してください。
【手順2】動かしやすい方向に動かしてキープ
動かしやすい方向にゆっくり体を動かし、2呼吸分キープします。呼吸は止めずに、自然に続けてください。
【手順3】ゆっくり戻して脱力
ゆっくりと基本姿勢に戻り、脱力します。この動作を3回繰り返します。
【手順4】動かしにくかった方向でも実施
動かしにくかった方向でも同様に行います。動かしにくい方向は、無理のない範囲で実施してください。
【ポイント】
動いている間も呼吸の流れを保ち、力みが出ない範囲で続けましょう。「気持ち良い」という感覚を大切にしながら、ゆっくりとした動きで実践してください。
操体法は体への負担が少ないセルフケアですが、産後の体は繊細な状態にあります。
安全に実践するために、次に当てはまる方は始める前に医師や助産師へ相談してください。
- 産後すぐ(産褥期)の方
- 帝王切開・会陰切開を受けた方
- 痛みや違和感が強い方
産後すぐ(産褥期)は安静を優先
産後6〜8週間は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれ、体の回復が最優先される時期です。子宮の収縮や悪露(おろ)の排出が続いている間は、操体法を含むセルフケアよりも安静を優先しましょう。
操体法を始める目安として、産後1ヶ月健診で医師から「異常なし」と言われてからが安心です。
産褥期を過ぎても、体調がすぐれない日は無理をせず休むことが大切です。
焦らず、ご自身のペースで始めてみてください。
帝王切開・会陰切開後の方への注意
帝王切開や会陰切開を受けた方は、傷が十分に癒えてから操体法を始めることが重要です。
傷の回復には個人差があるため、医師の指示に従ってください。
帝王切開の場合
お腹の傷は表面が落ち着いて見えても、内側の回復には時間が必要です。一般的な目安として、産後2〜3ヶ月が経過し、傷口の痛みがなくなってから始めることをおすすめします。
会陰切開・会陰裂傷がある場合
会陰部の傷が癒え、痛みがなくなってから始めてください。
座った姿勢で痛みを感じる間は、操体法も控えた方がよいでしょう。
こんな症状があるときは医療機関へ
以下のような症状がある場合は、セルフケアではなく医療機関への受診をおすすめします。
- 歩行時に恥骨周辺へ強い痛みがある
- 足が上がらない、寝返りで強い痛みが出る
- 腰痛が強く、歩く・座る・抱っこするなどの日常動作に支障がある
- 尿もれが長期間続く、または悪化している
- 操体法の実施中に痛みが出る
恥骨結合離開や腰痛の原因確認が必要な場合もあるため、整形外科、産婦人科、泌尿器科などで相談しましょう。セルフケアだけでは不安な方へ、母乳育児相談室 春では、助産師による操体法を取り入れた骨盤調整を行っています。
お気軽にご相談ください。
操体法は、やり方を複雑にするよりも、次のポイントを守ることが大切です。
- 起床時・就寝時など、毎日の習慣に組み込む
- 呼吸を止めず、脱力のタイミングで息を吐く
- 「痛いけれど効いている」ではなく「気持ちいい」を優先する
- 1日3分でもよいので、できる範囲で続ける
- 体調がすぐれない日は休む
- 骨盤ベルトを使う場合は、締めすぎず「支えられている」程度にする
寝る前は日中の緊張をほぐしやすく、朝起きた時は寝ている間のこわばりをゆるめやすいタイミングです。赤ちゃんが寝ている間など、無理なく続けられる時間に取り入れてみてください。
産後ママは、1日に何度も授乳を行います。同じ姿勢が続くと、骨盤周りの筋肉や関節に偏った負担がかかりやすくなります。
授乳姿勢が骨盤に与える影響
- 横座り:骨盤が左右どちらかに傾きやすい
- あぐら:骨盤が開きやすく、長時間続くと負担になることがある
- 柔らかいソファ:骨盤が後ろに倒れやすく、腰への負担が増えやすい
- 同じ側ばかりの授乳:体の使い方に偏りが出やすい
授乳クッションを使う、背中や腰にクッションを入れる、可能な範囲で左右を交互にするなど、小さな工夫でも負担を減らせます。
骨盤を整えると授乳が楽になる理由
骨盤は体の土台です。骨盤周りの緊張がゆるみ、腰痛が軽くなると、上半身を支えやすくなり、授乳姿勢も保ちやすくなります。体が楽になることで、授乳中のつらさが減り、気持ちにも余裕が生まれやすくなります。
授乳姿勢や骨盤ケアについて、もっと詳しく知りたい方は、母乳育児相談室 春の訪問ケア・通所ケアをご利用ください。
赤ちゃんと一緒にお越しいただけます。
Q. 操体法は毎日やっても大丈夫ですか?
毎日実施して問題ありません。少しずつ毎日続けることで効果を実感しやすくなります。ただし、痛みや違和感がある日は休みましょう。
体調は日によって変わるため、無理のない範囲で継続することが大切です。
Q. 産後いつから操体法を始められますか?
一般的には、産後1ヶ月健診で医師から「異常なし」と言われてから始めることをおすすめします。
帝王切開の場合は、傷の回復を待ち、産後2〜3ヶ月を目安に医師に確認してから開始してください。
産褥期(産後6〜8週間)は安静を優先し、不安がある場合は助産師や医師に相談してから始めると安心です。
Q. 操体法で骨盤矯正の効果はどのくらいで実感できますか?
個人差がありますが、2〜4週間継続すると変化を感じる方が多いです。
「腰が軽くなった」「動きやすくなった」といった感覚から始まることが多く、徐々に変化を実感できるようになります。
効果が感じられない場合や不調が続く場合は、やり方を見直すか、専門家へ相談しましょう。
操体法は、「気持ちいい」を大切にする、体にやさしいセルフケアです。
産後ママでも寝たまま、1回3〜5分でできる方法のため、育児の合間に取り入れやすいといえます。
- 膝倒し操体法:骨盤の左右バランスを整える基本
- 踵押し操体法:腰痛と骨盤を同時にケア
- お尻ふりふり操体法:骨盤周りの緊張をほぐす
- ネコの操体法:背骨から骨盤まで全体を調整
産後1ヶ月健診後から、無理のない範囲で始めてみてください。
「毎日完璧にやろう」とせず、できる範囲で継続することが大切です。
セルフケアで不安がある場合や、専門的なケアを受けたい場合は、助産師や専門家に相談することをおすすめします。
沖縄県南城市で産後の骨盤ケア・操体法をお探しの方は、母乳育児相談室 春へ。
温かみのある寄り添い型のサポートで、産後ママの心と体をケアします。
まとめ
操体法は、産後の骨盤まわりを無理なく整えたい方に取り入れやすいセルフケアです。痛みを我慢せず、ご自身の体調に合わせて進めましょう。
